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本間拓巳税理士事務所

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 消費税が8%になって約2ヶ月が経とうとしています。周りの状況を見ると増税の影響はそれほど大きくないように感じます。このまま何事もなく時が過ぎれば、第二四半期には個人消費も元に戻るのではないでしょうか。ずっと順調に推移するのを切に願うばかりです。
 しかし1997年に5%に増税した後の景気後退が、どうしても頭に残ります。そこで、その可能性と対応策について、小論文という形で考えてみました。

消費税増税後の景気後退の可能性とその対応策

消費税が8%に増税され、また平成27年10月には10%になることが予定されている。今のところ政府の経済対策は順調に推移しているように報道されているが、今回の増税から約1年経過後に、倒産件数が増えたり失業率が増加するのではないかと心配している。その根拠は次のとおりである。

事業者にとって消費税の増税は、その時点では単価の値上げと同じ効果をもたらす。転嫁が正常に行われかつ駆け込み需要の反動を乗り越えられれば、消費税は預り金として蓄積されるため、一時的には事業者の資金繰り改善に役立つ。しかしその意味するところは、取引ごとに少額の資金を借入れ、申告時期に一度に返済するしくみの借入をするのと同じということである。つまり、決算期を過ぎて申告時期になってはじめて、突然資金繰りが逼迫するのである。一般的に消費税5%から8%の増税は、納税額の60%増を意味する(8%÷5%=160%)。しかし実際の納税額の増加は単純ではない。零細納税者は確かに前年同月比160%である(10%増税時はさらに125%の負担増になるため、5%時からの増分は160%×125%=200%となる)。しかし、納税額が多い企業は前年の納税額を参考に分割納付しているため、増税による増加税額は分割納付分も含めて確定申告期に一気に納税負担がのしかかってくる。例えば中間申告が3回ある事業者は、第1回~第3回の納税額は前年同月比100%であり、最後の確定申告時には前年同月比340%の納税負担となる(60%×3+160%=340%。10%増税時は25%×3+125%=200%のため、増税前後の合計はなんと340%×200%=680%の資金負担となる)。もちろん預り金であるためどんなに多額になったとしても納税するのが当たり前であるが、預かった消費税を分別管理している事業者はまずいない。このような資金手当を予測できず、景気が落ち込まなくてよかったと言いながら当面の債務を返済し続けている事業者は非常に多いのではないだろうか。そのため確定申告期の資金負担に窮する納税者が増えるのではないかと予想する。期中に当面の債務を返済しているのだからまた借りればいいと考えるのは早計である。金融機関は、所得税や法人税の納税資金の手当はしてくれても消費税の納税資金のための貸付けはしてくれない。しかももしやむを得ず租税を滞納すれば、その滞納が金融機関にとっては借入拒否の理由となるのだ。
また、インフレ時には消費税の納税の仕組みは無利息の短期借入と同じ効果をもたらすためそれほど深刻になる必要はないが、デフレ時には、無利息であっても納税時までの貨幣価値の増加により相対的負担は大きくなる。

政府は、1997年後半からの景気後退の原因は消費税の増税ではなく、7月のアジア通貨危機と11月の金融システムの不安定化であると結論づけている。その根拠として増税の3ヶ月後に個人消費が回復している点を挙げている。しかし私は消費税増税に伴う納税資金ショートの可能性があるのではないかと考えている。11月の金融システム不安に伴う貸し渋り・貸し剥がしの増加も、発端は住専問題だったとしても、貸出総量の縮小からくる融資の困難化と納税に伴う突然の資金需要とのバランスの悪化という側面もあったのではないだろうか。ではなぜ1989年消費税創設時にはこのような景気後退はなかったのか。それは、この資金ショート効果がデフレ時特有の現象であるからだと考えることができる。また、1989年創設時は消費税の納税義務者の免税点が高かったことや限界控除制度(納税額の激変緩和措置)により中小企業者の資金繰りを急激に悪化させることのない措置がとられていたことも考慮すべきであろう。

以上の点を鑑みれば、昨今のように長年のデフレによって借入の相対的な負担が大きくなっている事業者にとって、消費税の増税は致命的な資金ショートをもたらす恐れがある。資金ショートによる倒産はすなわち黒字企業の息の根を止めることである。つまり、当然その後の法人税や所得税の税収減が予想されるのである。

もし、本年後半以降、個人消費の悪化の前(又は同時)に滞納の増加・黒字倒産の増加・失業数の増加又は有効求人倍率の悪化が見られるようであれば、その原因はこのような資金ショート効果によるものである可能性が高い。
(デフレから脱却し、アベノミクスによる景気の浮揚効果がこれらの悪化要因を吸収してしまうことを切に切に願う。)

ただ、もし資金ショート効果が原因であるなら、実はその対応策は簡単である。単純にその企業に資金を供給できさえすればよい。
具体的には「消費税の延納とその利子税の損金算入」施策が有効と考える。つまり消費税の分割納付である。
この措置は、結局納税負担を一時的に減らすだけであり、金融機関の借入れから国からの借入れへとシフトさせることに過ぎない。最終的な負担が減ることはないが、バラマキ予算と比較して資金を必要なところだけに注入することになるため、まさに政府の景気浮揚対策効果と軌を一にするものであると考える。また納税するのには違いないから公平性を損なうこともないし、最終的な税収に影響を与えるものでもない。政府が真にデフレを脱却できるまでの時限立法措置として、上記措置の導入を求めたい。



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